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人工知能がアシストするCADを使えるような日を迎えるために、いかにすべきかを考察する(その3)

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オートポイエーシスで語る、新しいナソロジーを探します

私が思う新しいナソロジーは、現実世界を理想世界に変換することから始まります。歯科技工物作成の技術の発展は、補綴物作成のための間接的な環境、つまり理想的な環境を得るため、加えて、なんらかの規範のようなものを探す歴史であったともいえるでしょう。具体的にこの規範とは、生体から得られたデータを元にセッティングされた咬合器と、生体の各基準点との関係や歯の並び方のルールのようなもののことです。複雑なものから簡単なものまでいろいろありました。例えば、理想的環境として、「咬合器」があります。口腔内で直接的に補綴物を作るわけにはいかないので、間接的な環境が必要です。また、「Bonwillの三角」や「スピーの彎曲」、「モンソンの球面説」などは歯の並び方などに様々な指針を与えてくれます。

先ほど簡単に紹介しましたが、最初に考案したナソロジストたちは、中心位をどのように解釈するかを世界の人々に問いかけたのではないかと、ふと考えるようになりました。私はその問いかけに対して、「仮想運動軸」と「デカルト座標系」を使う方法を提案します。現在では、CADで代表されるようにコンピュータ技術が発達しています。コンピュータ技術を使えば、下顎の運動経路について、左右1つずつではなく、術者が望むだけ、いくつでも採得できますし、単純な開閉運動についても運動経路に追加することができます。このように、従来のような実体の「咬合器」に理想環境を求めるのではなく、CADという新しいアイテムを利用することによって、新しい柔軟な環境で考察することができると思います。

これはわたくしの意見ですが、ナソロジーでいうところのターミナル・ヒンジアキシス(終末蝶番軸)に伴う「中心位」という位置は、実はこの世のものではなくて、歯科における理想世界、つまり形而上学的な物語の中心人物ではないか?ということです。この中心位は、人ではないですけれども。つまり、現実世界の物語ではない、ということです。理想世界と現実世界にはギャップがあります。簡単には理想世界の存在物が現実世界に現すことはできません。何らかの手続きが必要です。

ナソロジーが最初に発表されてからずい分時間が経ちますが、その間に中心位の定義が何度も変更されました。それだけ定義することが難しいことだと思います。その難しさの原因は、理想世界と現実世界のギャップにあると思います。このギャップがいつまでたっても解消されていないような気がします。現実世界では、必然性と偶然性が相互浸透していて、中心位に適用される下顎の顆頭間軸における回転運動、つまりヒンジアキシスのみの純粋なる回転運動だけを確認することがとても難しいのです。

患者自身が、どれほど下顎の移動を伴わないように開閉運動だけをするように心がけても、また、歯科医師などの術者が細心の注意を払って誘導して、純粋に開閉運動だけをさせようとしても、これを行うことは容易ではありません。このことは、歴史的に多くの歯科医師が経験してきたことだと思います。だからといって、絶対にできないというわけではありません。

人間の下顎の下顎頭は、完全な球形ではありません。また、下顎の骨は完全に左右対称でもありません。下顎頭が完全なる球形かつ、下顎骨が左右対称形ならば、回転軸は一つしかないかもしれません。しかし、人間の下顎頭は完全な球形ではなく、また下顎の骨は完全に左右対称でもなく、更にいえば、下顎頭の周囲には骨だけでなく、いろいろな緩衝するための組織が介在しているがゆえに、もしかしたら回転軸が2つあるかもしれないし、もっと複数個所存在するかもしれません。それどころかエリアとして存在しているかもしれません。そういうことになると、回転軸が無数に存在する可能性があることになります。これは、あくまで考察しただけのことであって、よく調査しないと実態はよくわかりません。

ここで、ターミナル・ヒンジアキシス(終末蝶番軸)と中心位の関係を考えてみましょう。「歯界展望」の2022年7月号に特集されている、「中心位を再考する(理論編)」より引用させていただきましたが、以下のような定義と理解できます。

(Centric relation in the terminal hinge position of the mandible , in which the hinge axis is constant to both the mandible and maxilla.)「下顎が終末蝶番軸を中心として純粋な蝶番運動を営むときの上下顎の位置関係が中心である」

ここであらためて、ターミナル・ヒンジアキシス(終末蝶番軸)を伴う中心位の定義を考えてみます。まず終末蝶番軸とは、1ミクロンのブレも許さず、純粋な回転軸なのか、それともいくらかのブレを許容するのか、この当たりが問題です。現在、終末蝶番軸というものが厳密に決められているわけではないようです。そのあたりの最新事情は、歯科の業界紙である「歯界展望」の2022年7月号に特集されていて、「中心位を再考する(理論編)」という記事が記載されています。杉田龍士郎という歯科医師が記述しています。この記事によると、中心位での回転軸は、形而上学的な定義によるような、「1ミクロンたりともブレも許さず」ということではなく、「目視で観察してブレなければよい」という表現でした。

デカルト座標系に、終末蝶番軸を伴う中心位をお迎えすることについて

歯科医師が考えている「中心位での回転軸」とは、理想世界のものではなく、実用的な意味での現実世界における定義のようです。現実世界では行為に対して必然性と偶然性が不可分で、相互浸透しているために純粋な回転運動のみを抽出することが難しいのです。コンピュータを使ったCADの理想世界では、各種の下顎の開閉運動からその運動を分析して回転成分と移動成分とに分けることができます。コンピュータを使ったCADでは、デカルト座標系を採用しており、運動データを取り込んで解析すると、そのことがよくわかると思います。

純粋に下顎の顆頭間軸の回転運動、つまりヒンジアキシスのみの回転運動が可能なのか、否かを探ることを可能にします。また、複数存在する可能性などもわかると思います。開閉運動はいくつでも採得することができ、更に側方運動などもいくつでも追加することができます。

デカルト座標系をロボットなどの人工物の運動に適用することは、人間の裁量権によって実現が容易なのですが、生物の運動を適用させるには複雑に回転運動と平行移動が絡み合っているために厳密に再現するとなると複雑です。中心位を、コンピュータを使ったCADの理想世界である、デカルト座標系にお招きして、いろいろと検証したらよいと思います。そのための手続きとして、歯科領域にオートポイエーシス理論で詳細を示した、ダイナミカル・システム理論を導入していただけるとよいと思います。 ナソロジーの歴史の中で、「1921年 McCollumは、ヒンジアキシス・ロケーターを考案し、ターミナル・ヒンジアキシス(終末蝶番軸)の存在を実証した」とあります。ただし、これはあくまで目視レベルでの話でしょう。どんな術者(歯科医師)が下顎を誘導してもミクロンレベルでは必ずブレが存在すると思います。現実世界において、再現可能な純粋な終末蝶番軸を見つけることは容易ではないと思います。現実世界では、咬合器のセントリックラッチを効かせたときのような下顎の純粋な回転運動のみというのはほぼないと思います。術者が手で拘束を加えても相当難しいと思います。現実世界では「運動の6自由度」がすべて、または複数の要素が勝手に結びついてしまいます。デカルト座標系を用いた理想世界では、勝手に組み合わされた「運動の6自由度」の下顎の運動を分解して各成分を表示させることができます。

仮想運動軸法について

なぜ、生体のヒンジアキシスと咬合器の回転軸を一致させる必要があるのでしょうか。必要があるというよりは、理想的な状態ということを考えて、そういう状況を設定したと思われます。歯科の業界紙である「歯界展望」の2022年7月号に特集されていて、「中心位を再考する(理論編)」という記事にも以下のように記載されています。

終末蝶番軸こそがナソロジーの中心教義です。すなわち、終末蝶番軸を同定し、それを咬合器の開閉軸と一致させることで、患者の開閉口運動を咬合器上に再現することこそがナソロジーの至上命題でありました。これが正確に行われれば、咬合器上で咬合高径を変更して製作した補綴装置が、患者の口腔内に最小限の調整で装着できるため、臨床上のメリットは計り知れません。

このようにナソロジーの目的が記されています。事実として、多くの人は終末蝶番軸を伴う中心位で、その位置がかつ中心咬合位である人は少ないようです。これらがずれているからといって、顎関節症になるとか、なり易いということもないようです。上記の記載中には術者の操作上のメリットはありますが、ナソロジーの目的が健康上にある理由ということはなさそうです。やはり、ナソロジーは生体機械論という原理主義に則った構造主義由来の概念であると考えられます。

※構造主義とは、20世紀の現代思想のひとつです。広義には、現代思想から拡張されて、あらゆる現象に対して、その現象に潜在する構造を抽出し、その構造によって現象を理解し、場合によっては制御するための方法論を指す語です。Wikipediaより

治療しない残存歯牙がたくさんある場合、上下顎の咬合の基準は中心咬合位です。通常歯の形状は前歯も臼歯もこの位置を基準にして形成します。現実世界において本当に生体の中心位と咬合器の回転軸を一致させることができると、咬合器上で自由に中心咬合位を決めることができます。つまり咬合高径を変えることができるということです。インサイザルピンを調整するだけで実行できます。ただこれを実際に活用できるのは、上下の歯列にわたって補綴物を作成するときだけです。咬合面を前装した臼歯を製作するときなどは便利な方法です。

これはあくまでも、私の考えですが、現実世界において、生体には下顎の純粋な回転軸は存在しない可能性が高いと思います。たとえ、1ミクロンでもぶれるのであればそれは下顎の純粋な回転軸ではありません。下顎の純粋な回転軸は、理想世界においては確実に存在します。理想世界と現実世界にはギャップがあり、簡単には重なりません。ギャップを解消すること、もしくは両者の橋渡しが必要です。理想世界と現実世界をつなぐためには、どのようにすればよいのでしょうか。

1つのアイデアとして仮想運動軸を紹介します。仮想運動軸とは、どのようなものでしょうか。言葉で表現するとこのようになるでしょう。上顎の歯列模型を咬合器に装着したとき、その咬合器の顆頭間軸が自動的に下顎の歯列模型の仮想運動軸になります。上顎の歯列模型を咬合器に装着するとき、フェイスボウ・トランスファーをすれば生体の平均的な位置に顆頭間軸が設定されます。目分量で行えば、それなりの位置に設定されます。これが仮想運動軸法です。

当然ながら、生体の下顎の開閉運動と咬合器の開閉運動は違います。たとえ、違っていても問題はないと思っています。実際の問題として補綴物をつくるとき、開閉運動の軸の位置の違いが歯の形状に及ぼす影響はなく、作業上問題になることはありません。仮想運動軸を採用するのは、現実世界ではターミナル・ヒンジアキシス(終末蝶番軸)を伴う中心位という位置で純粋に回転する軸を見つけることは相当難しいという考えからなのです。 また中心咬合位だけを問題にしているケースでは、軸の一致は関係ありませんので、仮想運動軸法で十分です。終末蝶番軸は、理想世界では存在していると思っています。ただ、その位置を再現可能な方法で現実世界に出現させる方法が見つかっていないだけだと思います。

仮想運動軸を使う方法では、患者が下顎を開閉運動させた時、その時の回転軸の移動量を測定していません。また、それを再現する方法もとっていません。したがって、咬合器上でインサイザルピンを調整して咬合高径を変化させると必ず誤差が出てしまいます。咬合高径を変化させる、つまり、中心咬合位を変化させる必要があるときは、生体上で確認用のマッシュバイトを採得する必要があり、下顎模型を再装着しなくてはなりません。

理想世界について

理想世界に「ターミナル・ヒンジアキシス(終末蝶番軸)を伴う中心位」をお招きしましょう。理想世界には誤差が存在しません。ミクロンのレベルのおいても回転軸のブレは0です。理想世界では「運動の6自由度」は個別に駆動させることもできるし、複数の移動や回転の要素を組み合わせて運動させることもできます。また理想世界では時間を順方向に進むことも、逆方向に進むこともできます。物体と物体は重なることも、接触することも離れることも可能で、ぶつかることもできるし、すり抜けることもできます。理想世界とは、例えば~論とか~説とかいうもの、また物理学などの数学で記述された世界もそれに相当するのかもしれません。

理想世界には誤差がなく、現実世界には誤差があります。この誤差とは、偶然性と必然性の影響で思わぬところで、寸法的な違いが出ることを指します。理想世界でも、設定いかんによっては、数学的に小数点以下の設定の桁数が非常に多くなる場合があります。

また、理想世界では要素が個別に存在できるのに対して、現実世界では複数の要素が結びついて存在しています。これは相互浸透の考え方から生じることです。簡単には人間が分けることができません。したがって、現実世界と理想世界の間にはインターフェイスが必要で、理想世界と現実世界を直接的に重ねたり連結しようとしたりしてもうまくいかないと思います。現実世界から理想世界にアクセスするためには、誤差の解決と現実世界からの理想世界の解釈が必要です。実際に操作をするのは歯科医師、または歯科技工士で日常の業務で行える範囲の操作方法でなくてはなりません。あまりに高価な機材や操作に手間や時間がかかるものは受け入れられません。

理想パーツについて

間接的に表現する下顎運動のための構成関連要素はCAD内で「理想パーツ」として製作します。たとえば、理想世界の左右の顆頭間軸の長さは万人共通で、110mmです。また、理想世界における下顎の左右の顆頭の形状は完全な球形で、位置的には正中矢状面と完全な左右対称です。回転軸は1つしかありません。

仮想運動軸法では上顎の歯列模型を咬合器にフェイスボウ・トランスファーしない場合、上顎の歯列模型は咬合器の基準面からずれて装着されますが、その場合でも運動データには誤差を生じません。ただ生体の基準面と咬合器に設定された基準面との間に誤差が生じているだけです。仮想運動軸法では、左右の顆頭間軸の長さは110mmで固定されています。男女の差もなく、年齢も関係なく、民族も関係ありません。すべてにおいて一定です。

通常の技工操作のためのケースでは必要ありませんが、何らかの理由で本当の左右の顆頭の運動の状態を知りたいと思われる時は、下顎歯列と左右の顆頭部の位置関係を計測し読み込むことで可能となると思います。左右の顆頭間軸の長さが110mmというのは、現在生体と同等な大きさの咬合器で採用されている長さです。咬合器の左右の顆頭は咬合器の下顎部分の運動をコントロールします。実際の生体では個人によって左右の顆頭間の軸の長さが変わり、3次元的な位置は左右完全な対称ではありません。この仮想運動軸法で重要視しているのは、下顎の歯列の上顎に対する三次元的な位置の変化です。この三次元的な位置の変化は、口唇前の測定法で採得します。このデータから咬合器上で、下顎模型の位置の変位の再現をします。口唇前で採得したデータを左右の顆頭間軸の長さが110mmという仮想運動軸の顆頭球とインサイザルピンの先端の運動に変換します。生体に存在していて左右の顆頭球の特定の位置の運動経路の再現ではありません。

測定のためのレベルの高いプロビジョナル・レストレーションについて

多数歯にわたる補綴物を製作する場合、上下顎の位置関係の測定のためのレベルの高いプロビジョナル・レストレーションのようなものが必要となってきます。それの前歯部は解剖学的形態を持ち、正確なアンテリアルガイダンスが付与されています。また、臼歯部は咬合高径を確保し、中心咬合位を確実に保持、再現できますが、望まれる解剖学的形態があると、より好ましいと思います。それは生体と歯列模型の間をインターフェイスします。3Dプリンタの利用が考えられます。

理想世界でなくてはできないこととは?

偶然性と必然性というカテゴリーからの発想がありますが、突然何かに妨げられたり、また何かに導かれたり、このようなことは現実世界のみを見つめる人たちの間で通用するお話でした。このように現実世界だけに固執すると、未来に関しては確定できることは何もありません。いつでも不安がつきまといます。

また、理想世界という言葉がありますが、これは都合の良い世界ということではありません。理想世界では未来に関しては、すでに確定しており、偶然性と必然性からの発想からもたらされる未来のようなことはありません。なぜなら、理想世界では過去も未来もなにもかも、すべてお見通しなのです。陰に隠れても見つかってしまいます。あらゆるものが丸見えなのです。まるで、アダムとエバの世界のようです。

ただ、人間には理想世界のことが、すべて明かされているわけではありませんし、人間も努力はしていますが、まだ十分には理想世界にアクセスできていないということです。偶然性と必然性というカテゴリーからの発想では、属する世界が違うので理想世界を記述することも、説明することもできませんし、もちろんアクセスすることもできません。このようなわけで、偶然性と必然性というカテゴリーからの発想からでは、理想世界に対して交流することができません。

理想世界にアクセスするためには、唯一性と多様性からの発想が必要です。唯一性と多様性からの発想では、多くの可能性の中から一つの現実に収束する、と考えます。理想世界にはあらゆる可能性がありますが、なんでも現実世界において実現できるわけではありません。整合性の問題があるからだ、と思います。理想世界は現実世界の上位概念であり、理想世界と現実世界を共有することで現実世界を理想世界に近づけることができます。理想世界は、現実世界からみると、抽象的な世界を取り扱うことと言い換えることができるかもしれません。

理想世界と現実世界のつながりを説明する、または、表現する手段として対称性という言葉があります。対称性は、扱う学問的な領域によって意味合いが少し違います。一般的には、対称性とは対称変換のように、見た目を変えない操作のことを示します。また、物理学における対称性とは、物理系の持つ対称性、すなわち、ある特定の変換の下での、系の様相の不変性である、ということです。数学では、ガロア理論のように、方程式が解けるかどうかという問題や群論の行使によって明らかになる代数的構造の構成的方法の表現などがあります。

対称性とは、「動かしても見た目が変わらない」という性質のことです。ですから、「動き」や「変化」とは裏腹の関係です。このような性質を利用して咬合面間の空間の変化の解析ができるのではないかと思います。上下顎の臼歯咬合面の近接関係の研究や咀嚼のメカニズムは、今まであまり研究の対象になっていない、またされたことがないと思います。咬合面間の空間の変化、それを解くカギが対称性であると思います。

歯の臼歯の咬合面の形状の分析は、対合歯を考慮にいれなくしては、意味をなしません。どんなに立派な歯でも対合歯を考慮にいれなくしては機能しないのですから。機能するということは下顎が運動することに大きく関与します。それは、上下顎の臼歯咬合面の近接関係を分析することであり、言い方をかえると咬合面の形状を対称性という観点から見てみるということになるのです。要約すると、歯の咬合面そのものを研究することよりも、今度はそれらが作り出す空間の変化を研究するということです。それは機能そのものを指します。

確かにそれは存在するのだけれども、一体どうしてこのような形状になっているのか、なにが役に立っているのかわからないもの、それが咬合面の形状です。ただ闇雲に凸凹しているのではないとは思いますが、理由はよくわかりません。もちろん、それは対合歯の存在と下顎の運動を前提として形作られていると思います。

歯科において対称性とは、現実世界における物質の基本的な存在様式のことを指すと思います。つまり、咬合面間の空間のしくみを研究することであると思います。有限要素法の利用が重要です。対称性とは、自然世界の仕組みであり、それは構造とエネルギーからできています。対称性を利用すると、物事の一部分、もしくは半分から、関連性などを元にして全体を知ることができます。数学的概念の導入をすることによって、抽象化、理想化して、数学モデルを使うことで、今までにない奥行と深みを出すことができるでしょう。人間は現実世界から抽象的世界を抽出しましたが、実はそのような理想世界の方が現実世界よりも先行していて、抽象的世界が結果的に現実世界に結実している、と私は思います。

歯科技工に興味がある歯科医の先生方へ

ナソロジーが衰退した理由として、時代の流れとともに歯科技工が歯科技工士に移譲されてしまい、どちらかというと歯科医師のかかわりが少なくなってしまいました。歯科技工物である補綴物を十分に、また、自由に設計するには治療に対する100%の裁量権が必要です。ナソロジーを受け入れて実践している歯科医師の先生方には、歯科技工に対して並々ならぬ関心があると思います。それは歯科の歴史を紐解けば一目瞭然でしょう。咬合器という生体の擬似的な理想的環境の構築の歴史は、理想的な補綴物製作のためという目的があったからであり、歯科技工というものにも歯科医師が積極的にかかわるべきものであるという認識がひときわ大きいと思います。人工知能の活用も本格的に可能になる時代を迎えて、時間があったなら自分で作ってみたいと思われる歯科医師の先生方には、この機会にぜひ、歯科医師の手に「補綴物の設計」を取り戻していただきたいと思います。

人工知能がアシストするCADを使えるような日を迎えるために、いかにすべきかを考察する(その4)へ続く

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